日本におけるヴィラ=ロボス研究の先駆者、村方千之氏の文章を公開

1991.2.17 ヴィラ=ロボスの作品を聴く特別コンサート

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ヴィラ=ロボスの作品を聴く特別コンサート
<歌と室内楽の午後>
1991年2月17日㈰
自由学園明日館講堂
主催:日本ヴィラ=ロボス協会

[曲目メモ]

ショーロスの形式による木管五重奏曲(1928)

ヴィラ=ロボスが木管五重奏曲という形で書いたのはこの曲だけである。副題には“ショーロスの形式による”と示してはいるが、彼の代表作である16曲のショーロスの「連作」の目録には数えられていない。しかしここでも同様にブラジルの民衆音楽であるショーロの様式、流儀、雰囲気が存分に生かされており、当時の芸術の中心地であったパリで作曲され、初演されている。

複数の楽器が即興的に示す<掛合い>の面白さ、そこから生まれる複雑なリズムや自由な旋律こそが、ショーロの醍醐味である。彼はこの作品でフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルンを重ね合わせたりずらしたり、また楽器同士に<対話>をさせたりして、ショーロ風な彼独特の世界を作り出している。

曲は叙情的になり劇的になり、原始的になり現代的になり、民族的になり西洋的になりして留まることなく次々と変化していく。彼の持っているあらゆる音楽的感覚がそこに凝縮されているような、室内楽曲中の逸品であると言える。

市村由布子
Yuko Ichimura

※この作品以外の解説は故・村方千之氏が執筆