日本におけるヴィラ=ロボス研究の先駆者、村方千之氏の文章を公開

村方千之氏からの手紙⑧(1987.5.8)

村方千之氏からの手紙⑧

村方千之氏がプログラムノートに執筆した文章を抜粋し、「村方千之からの手紙」というシリーズでご紹介しております。

ヴィラ=ロボス生誕100年記念特別演奏会<第2回>
“ギター・歌曲・ピアノの夕べ”
1987[昭和62] 年5月8日 第一生命ホール
主催:日本ヴィラ=ロボス協会

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【チラシから】

新たな共感を呼ぶヴィラ=ロボスの音楽

一昨年のユネスコの国際評議会音楽部会の総会では1987年をヴィラ=ロボスの年とすることが決議され世界各地でそのための催しを行うことが話合われたという。また昨秋ヴィラ=ロボスの生誕100年を前にして地元であるリオ・デ・ジャネイロの新聞は一面全体を使って彼の業績をたたえ、1987年にはアメリカやヨーロッパをはじめ世界の各地でヴィラ=ロボスのフェスティバルが催されること、ニューヨークではすでに11月からフェスティバルが始められ、向う一年間ヴィラ=ロボスのコンサートが様々な形で続けられることを報じている。ブラジルを母国とする野趣とロマンの作曲家であるH.ヴィラ=ロボスは72年の生涯にその超人的で豊じょうな創造力によって、交響曲、管絃楽曲などの大曲から、室内楽曲、ピアノ曲をはじめ歌曲やギター曲などの小品にいたるあらゆる分野に筆を染め、およそ1000曲を越す作品を残しているが、いま世界で著作権収入の最も多いのはヴィラ=ロボスだと言われるほどに彼の作品は世界で広く演奏され親しまれているのである。ヴィラ=ロボスの音楽の魅力は何と言っても人間味溢れる情感の深さにあると言ってよい。まさに今の時代が失おうとしている貴重なものを気取らない率直さで力づよく訴えてくる。時代を越え、言葉をこえて真のロマンが新たな共感をもって蘇ってくるのである。私はこの10年ほどの間に幾度かヴィラ=ロボスのコンサートを行い作品の紹介に力を入れてきたが、今回このヴィラ=ロボス生誕100年を前に日本ヴィラ=ロボス協会が設立され、この作曲家の作品を深く愛し共感をもっている人々の繋がりの場をもてることになった。これからはさらに同志の輪を広げヴィラ=ロボスの作品がもっと多くの人々のものとなることを願っている。今年は五回の「日本ヴィラ=ロボス協会」主催のコンサートを通して更に多くの作品を音楽ファンの間に紹介できることを楽しみにしている。

日本ヴィラ=ロボス協会々長
村方 千之(指揮者)


【プログラムノートから】

ごあいさつ

ヴィラ=ロボス生誕100年記念コンサートの第二回は、ヴィラ=ロボスの全作品中では音楽的内容の上で最も重要な位置にあるピアノ作品とわが国では早くから親しまれてきたギターの作品、それに数の上では彼の作品の中で最も多く書かれている歌曲から選んでプログラムを組みました。今回の企画者でもあり演奏者でもあるピアニストの宮崎幸夫さんは数年前からヴィラ=ロボスのピアノ作品を日本で紹介することに情熱を傾け、今年はさらに長年の念願であったピアノ曲の出版の実現に多大の尽力をされました。今日はそのヴィラ=ロボスへの深い思いがホール一杯に大きく鳴響くことでしょう。

ギタリストの赤坂さんはこのコンサートのためにスペインから帰国してくださいました。今日はその素晴らしいギターの音色をとおしてヴィラ=ロボスの“魂の故郷”を心しづかに思い起こさせて下さるものと思います。

ヴィラ=ロボスの歌曲が男声で歌われることは日本では珍しいことですが、テノールの近藤伸政さんは今回意欲的にヴィラ=ロボスの歌曲へ挑戦して下さいました。ピアノの片山泰子さんとの息の合ったアンサンブルで、その柔らかく美しい歌声をとおしてヴィラ=ロボスの新たな魅力を大きく広げて下さる事を期待しています。

第一回に引き続き、このコンサートにも沢山の方々のご来聴を得ましたことを大変嬉しく思います。この後7月、9月、11月とヴィラ=ロボスの記念コンサートが続きますが、また是非ともご来聴下さいますようお待ちしております。

1987年5月
日本ヴィラ=ロボス協会会長
村方 千之

※濱田滋郎氏(音楽評論家)が曲目解説を執筆


◆このプログラムノートには、下記の寄稿文が掲載されております。

 

カルロス.B.ブエーノ(駐日ブラジル大使)「メッセージ」
ツリビオ・サントス(ヴィラ=ロボス博物館館長)「メッセージ」
濱田滋郎(音楽評論家):「曲目についてのメモ」「歌詞対訳」「ヴィラ=ロボスとルービンスタイン~共に生誕百年を迎えた二つの巨星の物語~」

編集:市村由布子
Editora: YUKO ICHIMURA