日本におけるヴィラ=ロボス研究の先駆者、村方千之氏の文章を公開

村方千之氏からの手紙⑭(1991.9.8)

村方千之氏からの手紙⑭(1991.9.8)

村方千之氏がプログラムノートに執筆した文章を抜粋し、「村方千之からの手紙」というシリーズでご紹介しております。

デオ・ヒアン(バンドリン)と中野正代(ピアノ)の奏でる
エルネスト・ナザレの世界
1991 [平成3] 年 9月8日 自由学園明日館講堂
主催:日本ヴィラ=ロボス協会
企画・製作:(株)タッタルーガ


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【プログラムノートから】

エルネスト・ナザレ(1863~1934)

 リオ・デ・ジャネイロに生れ育ち、幼い頃には母にピアノの手ほどきを受け、後にフランス人L.ランベールについてピアノと作曲を学んだ。14才の時に父親に捧げた処女作ポルカが主版され、一躍世間の注目を受けるようになった。23才で結婚し銀行に勤めたが、やがて作曲やクラブでの演奏で生計を立てるようになり、リサイタルで新作を発表したりした。50才になり映画館オデオンの音楽サロンともなっていた待合室で、ベートーベンやショパンを弾くほかに自作のポルカ、タンゴ、ワルツなどを披露し、人々を楽しませた。また下町の音楽であったショーロをクラシック風に編曲して演奏し、上流社会の人々にも親しまれるようにしたのは彼であった。彼自身は自分の演奏は聴くためのもので踊るためのものではないと言う信念をもっていたとも言われ、作品が単に即興的なものではないと言う自負を示していた。

この映画館オデオンのオーケストラでチェロを弾いていたのが他ならぬ若きヴィラ=ロボスで「ナザレこそブラジルの魂を真に具現する人だ」と尊敬を寄せていたと言う。ナザレは約220曲のクラシック風なサロン音楽を残し、今も世界中の多くのファンが彼の曲に親しんでいる。

(村方 千之)

※執筆者名の表記がありませんが、村方千之氏と推測して掲載いたします

編集:市村由布子
Editora: YUKO ICHIMURA