日本におけるヴィラ=ロボス研究の先駆者、村方千之氏の文章を公開

村方千之氏からの手紙㉗(2003.1.19)

村方千之氏からの手紙㉗(2003.1.19)

村方千之氏がプログラムノートに執筆した文章を抜粋し、「村方千之氏からの手紙」というシリーズでご紹介しております。

魅惑のヴィラ=ロボス特別コンサート
<ピアノ・歌・室内楽・チェロオーケストラ>
2003[平成15]年1月19日 自由学園明日館講堂
主催:アート・シーエム
後援:日本ヴィラ=ロボス協会、ブラジル大使館


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【チラシから】

真の人間性を失わなかった作曲家ヴィラ=ロボス

「私の作品は返事を期待せずに書いた、後世の人々への手紙である」と言ったヴィラ=ロボスは、その72年の生涯に音楽のあらゆる分野にわたって1300曲以上とも云われる作品を残している。また、有名な世界的チェリスト、パブロ・カザルスは「この20世紀初頭の混沌の中にあって真の人間性を失わなかった偉大な作曲家」とヴィラ=ロボスの一途で純粋で精力的な作曲活動を讃えている。

ブラジル連邦共和国が独立直前の1887年に彼はリオ・デ・ジャネイロで誕生し1959年にこの地で亡くなった。まったく独学で作曲法を習得し、偉大なバッハを敬愛したことは良く知られているが、その生涯はまさにブラジルの言葉でブラジルの音楽を書くと云う信念を貫いた人であるが、日本語で日本の音楽を書こうと足跡を残した山田耕筰(1886~1965)と時期を同じくしているのは誠に興味深い話である。

私は1975年にリオで行なわれたヴィラ=ロボス国際指揮者コンクールで賞を得て以来この25年程の間、日本でのヴィラ=ロボスの音楽の普及と啓蒙に努めてきたが、その甲斐あって近頃は彼の名も多くの音楽家、また愛好家の間で広く知られるようになっている。今回は、私としては久々の「ヴィラ=ロボス・コンサート」の企画である。改めてヴィラ=ロボスの音楽の人間性の豊かさ深さに触れ、後世の人間の一人としてその思いを込め音楽を伝えたいと思っている。

日本ヴィラ=ロボス協会々長、指揮者
村方 千之


【プログラムノートから】

「ヴィラ=ロボスの作品は後世への手紙」

1987年にヴィラ=ロボスの生誕百年を記念した催しが、ユネスコの呼びかけで世界的規模で行われたのはもう16年前になる。日本でもこの年、日本ヴィラ=ロボス協会を中心に5回ものコンサートが盛大に行われ、NHKの朝のニュースにもなったことを思うと大変懐かしくなる。ヴィラ=ロボスの作品を演奏する度に感じることは、これほど自由に、奔放に湧き出てくるインスピレーションをそのまま音楽にしてきた作曲家は他には見当たらないということである。そこにはストレートに人の心に飛び込んでくる深く強い音楽の世界があり、彼の心に共感しないと演奏はできないと言ってもよい。私は28年前にヴィラ=ロボスの指揮者コンクールで賞を得て以来、日本での彼の作品の啓蒙と普及を使命と思い今日まで努力をしてきたのだが、今振り返るとまだほんの一部分しかそれを果たしていないことを情けなく思っている。まだまだ演奏したい、演奏してもらいたい作品が山ほど残っている。「私の作品は返事を期待せずに書いた後世の人々への手紙である」と言った彼の思いを広く届けたいのである。私と一緒に啓蒙活動をやってくださる若い同士を募りたい。

日本ヴィラ=ロボス協会々長、指揮者
村方 千之


※作品解説は市村由布子が執筆


編集:市村由布子
Editora: YUKO ICHIMURA